君を愛す ただ君を……
「あの噂は本当だったんだあ」

「え? 噂?」

あたしは首を傾げた

近くにいた女子も数人近寄ってくると、あたしを中心して小さい円が出来あがった

「うん、1年生のときにね」

声をかけてきた女子が、隣に立ったばかりのクラスメートに同意を求めるように、言葉をかけた

周りに近寄ってきた女子たちが、うんうんと同時に頷き合った

「越智君が、クラスの女子に告白をして振られたっていう噂が女子の間で流れたの。それで誰だろうねえって。越智君って女子に人気があるからさ。誰が振ったのか!って一時期、盛り上がったよねえ」

「そうそう。それでクリスマスごろに笹原さんと越智君が付き合い始めたから、きっと笹原さんに振られたんだろうって。笹原さんが、越智君の熱意に負けて付き合い始めたんだって思ってたの」

「越智君って、告白されることが多いけど、誰とも付き合わなかったからねえ」

まわりに集まってきた女子によって、1年生のときの噂を知った

そんな噂があったなんて、知らなかったよ

あたしは引っ越してきたばかりで、友達なんていなかったら…

親しい友人が2年生になるまでできなかったから

地元の人たちが、結構集まって入学したみたいで、もうオナ中同士の子たちで固まってたんだよね

あたしが入る隙がなくて、1年生のころはよく一人でいたなあ

「どうして越智君を振ったの?」

「え?」

あたしは突然の質問に、顔をあげた

「だって、越智君だよ?」

「よく知らなかったから。引っ越してきたばかりで…」

「勿体ないことしたねえ」

「そうなの?」

あたしは首を傾げた

今のあたしなら、わかる

たしかに1年前のあたしは、勿体ないことをしたと思う
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