君を愛す ただ君を……
「だって、医者の息子だよぉ。将来は、院長の椅子が待ってるんだもん。笹原さんが、別れたくないって必死になる気持ちもわかるけどさあ…ちょっとやりすぎかなって思う」

まわりにいる女子たちが肩を竦めた

「でもしぃちゃんの気持ちはすごくよくわかる」

あたしは小さな声で、呟いた

好きな人を想う気持ちも、離れたくないって思う気持ちも…わかる

必死になりすぎて、他人を傷つけてしまうのはよくないけど、しぃちゃんがそれだけ苦しんでるんだってわかるから…恨めないよ

「…で? 間接だったけど、越智君から熱烈な告白を受けたんだよ? 涼宮さんはどうするの?」

まわりにいる子たちの目がきらきらと輝きだした

あたしは、『え?』と身を引くと、小首を傾げた

「よく…わかんない」

あたしは苦笑して、手を左右に振った

あたしの気持ちが、落ち着く前に、大ちゃんと越智君でなんだか納得し合っちゃって

あたしは越智君と付き合うことになったのかなぁ…なんて、思っていたら、越智君が教室で、しぃちゃんにあんなことを言うし

あたしはどうしたらいいのか、よくわからないんだよね

越智君の中で、あたしはどんな位置にいるのだろう?

あたしも、あたしの中で越智君はどこにいるの?

『彼氏』…ううん、違う

『友達』…でもない気がする

よくわからない

『友達以上恋人未満』…うん、その言葉が一番しっくりきそう

好きだけど、恋人っていう枠にはまだ入れてないよ

あたし、しぃちゃんを傷つけたのに、越智君と付き合っていいの?

「ま、仕方がないよねえ。冬休みの二人の進展にこうご期待って感じかなあ」

クラスメートたちが、あたしの気持ちを余所に勝手に盛り上がった

あたし…わからないよ

越智君が好きだけど、恋人同士になるっていうのが想像できない

しぃちゃんの彼氏っていうイメージが強すぎて、あたし、踏み込んでいいの?

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