君を愛す ただ君を……
「手術、受けてみようかな」

あたしがぼそっと呟くと、越智君の肩がびくっと反応した

「本当に?」

あたしから離れると、越智君がすごく嬉しそうな顔をしていた

「良かった。親父に話してみるから」

越智君があたしを抱きしめてくれる

ガラっと保健室のドアが開くと、大ちゃんが入ってきた

「部活、終わったけど…陽菜、大丈夫?」

大ちゃんが、心配そうな顔でベッドの横に立った

「じゃ、俺は帰るから。涼宮は、岡崎先生に送ってもらうといいよ」

越智君が片手をあげると、保健室を出て行った

「もしかして大ちゃん、聞いてた?」

大ちゃんが、にこっと笑うとあたしの頭を撫でた

「長生きできるといいな」

大ちゃんが優しい声で、言葉を発してくれた

「うん。大学受験とかしてみたいなあ」

越智君と図書館で受験勉強して、試験日の前日にメールを送りあったりして…

お互いの大学の合格発表を一緒に見に行ったりしてみたいなあ

手術して、本当に治るなら、やってみたいことはたくさんあるよ?

心臓なんか気にしないで、思い切り走ってみたい

バスケットとか、サッカーとかやってみたい

乗り遅れそうになる電車に駆け込み乗車だってしてみたい

…夢ならたくさんある

やってみたことも

今までできなかったこと全てをやってみたいよ

あたしは心臓に手を置くと、手術に成功した自分の姿を思い描いた
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