君を愛す ただ君を……
あたしにだって、将来はあるよ

短いかもしれないけれど、越智君とは比べ物ならないほど、ちっぽけな未来かもしれないけど

あたしにだって、将来はある

あたしはまだ生きてるんだよ?

「手術代でお困りなのでしょ? 愁一郎の前から姿を消せば、そのお金を自由に使っていいのよ?」

「姿を消すって…同じ学校に通っているのに」

「だから、退学すればいいじゃない。愁一郎にはね、もう決まったお嬢さんがいるのよ。まだあの子は知らないけど、病院を背負って立つ男にふさわしい女性がいるの。あなたのように、たとえ手術しても子が産むにも、身体のリスクを負うような女はいらないのよ」

『いらないのよ』って、ひどい…

あたしだって、一人の人間だよ?

まるで壊れた人形みたいに言わないでください

越智君が、家で苛々してるって気持ちが少しはわかるような気がする

でも越智君を産んでくれた大切な人なのに…

越智君を育ててくれた人なのに…できれば、憎みたくないよ

越智君と離れたくない

でも、越智君から離れれば手術を受けられるだけのお金が手に入る

あたし、どうしたらいいの?

こんな短時間で決められない

「あなたには、あなたに似合う男がいるわ。ただ愁一郎が駄目なだけよ」

「…かりました。今日だけは学校に行かせてください。明日からもう学校には行きません」

あたしは越智君のお母さんとは目を合わさずに言うと、鞄の取っ手に指を絡ませた
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