クレーン・ゲーム

あの日と同じ

記憶にございません、と男は答えた。
僕が、このファイルはなんだったか、と聞いたのだ。
僕は、そんなことで仕事になるか、と答えた。
男はまた、記憶にございませんと答えた。

このファイルには何か書いてあるが、なんの用途に使われるのかがわからなければ、鍵がなくて入れない家と同じだと僕はいった。

それでも男は、記憶にございません、と繰り返した。

誰かこの中に分かるものがいるか、と言った時、周囲の人がマネキン人形に変わり、静寂が広がった。

僕は、自分がしていたことは無意味だと知り、絶望を感じる。

ファイルには、何が書いてあるのだろうか。
すると机の上にファイルについて、というラベルが張られたビデオテープがあったので、再生してみた。

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