クレーン・ゲーム

夢の向こうで

君はまるで浦島太郎だな、と医者がいった。

ここは病院のようだ。僕はいつ病院に行ったのだろう。

医者は僕が5、6年ほど眠り続けていて、最近目を覚ましたが、いまでも1日の半分以上、眠って過ごしているという。

そんな話、はじめて聞いた。

君は現実で起こったことを、まるで夢を見ているかのように話す、と医者がいう。

僕はそんなことはないといいかけたら、

君は僕ではない。

高波牡丹(たかなみぼたん)だ、
と医者がいうので、そうか、僕は高波牡丹なのか、というと、
医者は、その調子だ。君の精神は君自身に近すぎるのだ。それを離さなくてはならない、と答えた。

「おい、大丈夫かよ」

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