DARK†WILDERNESS<嘆きの亡霊>
静かな波長で耳に流れ込んでくるシルバの声が、記憶の奥底に封じ込めた名前を浮き上がらせる。
「ルーシー……ルーシー・マクドナルド」
それは自然と口をついて出た。
「そう……いい名前だ」
シルバの声にハッとして、その名前を口にしたことに気付き、戸惑った表情でルシフェルは片手で口元を押さえた。
そんなルシフェルを見て、シルバはふふっと笑みを漏らすと、剣に手をかざし
「森の王、シルバの名において命ずる。汝、ルーシー・マクドナルドの意思のままに、その身を守り力を与えよ」
そう唱えるようにつぶやき、長い人差し指でその刀身をすうっと撫でた。
すると、シルバの指がなぞった後を追うように、剣身に青い光が一筋走って……すぐに消えた。
驚きそれを見ているルシフェルに
「何もかも終わったら」
シルバは剣の柄を持ち、ルシフェルの手へと持たせて言う。
「きっと、ここへまた戻っておいで。僕はずっとここで……君の望みがかなうのを願っているよ」
優しげに細められ、自分を見守る眼差しと視線が交差した。
ルシフェルの目からまた一筋の涙が伝う。
「……きっと」
そう言うのがやっとだった。