DARK†WILDERNESS<嘆きの亡霊>
父は普段はアルマから少し離れた、今自分達が住む屋敷のある町に置かれた軍の練兵場で、武術指南役を務めている。
そこは国内にいくつかある練兵場のうちのひとつで、アルマに次ぐ規模を持つところ。
代々バラシュ家の者がそこで指南役を勤め、兵役について他のところで簡単な訓練を受けた兵達の多くが、その後ここで本格的に訓練をつんでアルマへ送られる。
その訓練に日々追われ、なかなか町を出ることのない父だが、今日は王宮へ定期報告へ向かう日。
久し振りにそれについていくか聞かれ、一も二もなく頷いてついてきた。
何度か連れて行ってもらった王宮。
そこには同じ歳の皇子がいて、何度か顔を合わせるうちにすぐに親しくなった。
クロード・エルカイザ。
エルカイザの第二皇子は、その立場に似合わず気取ったところがなく、穏やかで親しみやすく。
そんな彼に会うのはとても楽しみだ。
久しぶりの再会に胸躍らせながら道中の景色を眺めているうちに、ふと、あることを思い出し、恐る恐る隣に座る父に声をかけた。
「すみません、父上。本を買いに寄ってはもらえませんか?」
「……本?」