DARK†WILDERNESS<嘆きの亡霊>
「この国に……王はいない……」
存在はしていても、何もしない。あるいはすることも出来ないのか……とにかく無力なその存在は、居ないのとかわりはしない。
「彼女が進言したいといった王はいない。だから今王宮に向かうのは勧められない。けど……彼女の意見には俺も賛成だよ」
じっと黙ってファーレンの話す言葉に耳を傾けていたシルバは微かに目を細めた。
つい、と上げられたファーレンの眼差しの奥底に見える決意のようなものを感じたからだ。
「彼女が目が醒めたら、話をさせてくれないか? そして、君にも聞いて欲しいことがある」
まっすぐに、シルバと目を合わせてファーレンは言った。
「力を、貸して欲しいんだ」
迷いの消えた、強い、眼差し。
つい先ほどまで辺りを覆っていた土埃もすっかりおさまり、瓦礫に囲まれた中庭を見下ろす空はすでに日が落ちようとしているため赤く染まろうとしている。
それでもその透明度を失わない、澄んだ空。
それと良く似た透明度を持つ瞳を見つめ、シルバは静かに笑みを浮かべ
「いいでしょう」
ゆっくりと頷いた。