DARK†WILDERNESS<嘆きの亡霊>
「ディラハン野郎をだしやがれ!!」
大通りを曲がって百メートル程進んだ所を駈けていたミカエルの耳に、今度ははっきりと声が聞こえてきた。
すぐ先に入り口が見える細い路地の奥のほうから、棒切れで壁を叩くような音や、野次が聞こえてくる。
どうやら間違いないようだ。
聞こえてきた怒声に含まれる『ディラハン』の言葉に、ミカエルはその先に目的の医師の家があることを確信する。
敵国であるディラハンの兵をかくまうという医師の家。
「ふう」
乗り気でなくとも、任務は任務。
路地の入り口の前で一旦足を止め、ミカエルは小さく息を吐くと、曇った表情でそこへ向かい足を踏み出した。
聞いたとおりに、医師の家らしき建物の前には人だかりができていた。
その向こう側に憲兵の帽子が見え隠れしている。
「さて、どうしたものかしらね?」