DARK†WILDERNESS<嘆きの亡霊>
「うん……あのね。ランスさん、とっても優しくて普段も穏やかなんだけどね……ああ見えて、寝相だけはとっても悪いんだ」
小声をさらに小さくしてそう言って、ジノが向かいのベッドを指差す。
促されるまま視線を向けると、成る程……そうなのかもしれない。先ほどジノが寝ていた位置までずれてうつ伏せになっている牧師の姿が見えた。
「だからね。僕、こっちで寝てもいいかな?」
「ああ……いいよ」
言われるままに壁際へ体を移動させ、ジノが入れるほどのスペースを作る。
任務中は、ぎゅうぎゅう詰めの軍用トラックの荷台や、時には木の上など……身じろぎ一つ出来ない状況で仮眠をとることも多いアレックスにとって、子供一人潜り込んだ所でベッドは充分に広く、ジノの邪魔をしないのも易いことだ。
「ありがとう」
空いたスペースに移動して毛布に潜ろうとするジノを眺めていると、その寝間着の裾から覗く膝上あたりに、引き攣れた古い傷が見えた。
「その傷……」
「あ、これ?」
アレックスの声に顔をあげ、ニコリと笑顔で返しながら
「これ、ルシフェル様に助けられた時にした怪我の跡だよ。僕、撃たれちゃったらしくて……あ、でも。もう全然痛くはないんだよ」
ジノは傷をさするように一度撫でて、そのまま横になり体を丸めた。