DARK†WILDERNESS<嘆きの亡霊>
「アンナさんも、ジョセフさんもランスさんもとっても優しいから僕ちっとも寂しくないし。足も僕は不便だって思ってないし……だからね、助けてもらえて本当に良かったって、幸せだって思うんだ。だからね……ありがとうって言って欲しいんだ。そしたら……ルシフェル様も少しは悲しくなくなるかもしれないよね。ありがとうって、人を幸せにする言葉なんだって……ランスさんいつも言ってるもの……」
完全に仰向けになったジノはそう言って大きく伸びをすると、眠そうに目をこすった。
眠いのも当然だろう。子供はとっくに熟睡しているであろう時間だ。
「わかった。伝えるよ……それより、もう寝たほうがいい」
仰向けになった拍子にずれた毛布を肩までかけ直してやりながらアレックスが促すと
「う……ん……ありがとう……アレックスさ……」
ジノはむにゃむにゃとそう言いながら目を閉じて……やがてすうすうと寝息をたてはじめた。
とっくに限界だったのだろう、すぐに寝入ったジノを横目に確認して、アレックスも目を閉じる。
早朝に発つと言っていたから仮眠程度にしかならないだろうが、常日頃から短時間の睡眠で体力を補うのには慣れている。
リディルでディラハン兵がルシフェルらしき人物を見てからそう日は経っていない。
もしかしたら本当に会えるかもしれない。
そうしたら自分は一体どうするのだろう?