DARK†WILDERNESS<嘆きの亡霊>
ならばこの事態が示すのは……
「ディラハンが対抗できる兵器を開発したのでは……」
ラファエルの中に浮かんだ懸念。
あり得ないことではない。ディラハンとてこの大陸を二分する軍事国の片割れ。いくら守護天使の存在が最近までエルカイザ自体でも秘匿されていたとはいえ、実際に戦場には何度も赴いているのだ。そこから僅かずつでも情報が漏れていてもおかしくはない。
そしてそれを元に対抗できるものを開発していたとて少しも不思議はない。
互いに互いの戦力を上回ろうとするは敵対する勢力同士至極自然な道理。
実際、守護天使自体……そうしてディラハンに対抗するために産み出されたシロモノなのだから――
だが、明らかな動揺を見せた守護天使の視線を受けながらも、その事実を告げた唇は静かにゆっくりと柔らかに弧を描いた。
「心配はいりませんラファエル。多分通信機に支障が生じただけでしょう、あの子に限ってそれはありません……いえ、貴女達守護天使に何かあるなどあり得ないのですから」
「ですが……そんなこと今まで一度も……敵がなんらかの新しい力を手にした可能性も……」
「大丈夫ですよ。確かに、その可能性も否めないけれど……貴女達を上回るなどそう易いことではありません。付け焼刃の真似事をするのがせいぜいでしょう」
そう言うと、王妃は腰掛けていた椅子から静かに立ち上がり、目の前にひざまずいたラファエルの方へ一歩歩み寄り、その白く細い手を伸ばしラファエルの頭をそっと撫でた。