ピンク&ブラック
pink―あの、夏―
先生

春休みの午後。
私、中山莉乃愛(なかやまりのあ)は高校の生物準備室にいた。
生物準備室にはもう一人・・・・・・担任の水沢先生がいる。
「莉乃愛ももうすぐ2年生だな」
先生は私の前髪に触れながら、言った。
「私、2年になんかなりたくない。先生と離れたくない・・・・」先生の腰に手を回し、抱きつく。
「担任じゃなくなっても、生物の授業で会えるんだから」
先生はそう言いながら、メガネの奥の瞳をくしゃっとさせて微笑んだ。

この瞳が好き。
笑うと目尻が垂れて、より一層優しい顔になる。
20代後半の先生はうちの学校の教職員のなかでも若いほうで。爽やかなルックスと優しい物腰から、男女問わず生徒から人気があった。
背が高くて、色白で、目がなんとなく茶色い。
色素の薄い感じが好きだった。「あ、莉乃愛のお母さん出てるよ」
細くて長い綺麗な指の差す先を見てみると、テレビ画面の中でママが笑っていた。
「派手なカッコウ・・・・・・」
呆れた顔で溜め息をつく。
私の母親の中山レイ。
ママはオリジナルの化粧品のブランドを持っていて、そのブランドを自身が広告塔になってPRしていた。
美容コメンテーターとして度々、地元のローカルテレビに出ついたんだけれど・・・・・・・。
口が達者なママは今ではレギュラーになり、ローカルラジオでも「中山レイのビューティーソウル」というフザケた番組までやっている。
ママはフランス人と日本人のハーフで、その容姿は人を惹きつけた。
もうすぐ40になる歳だけど、日頃から念入りに手入れをし、自分磨きに金を惜しまないママはとても若々しかった。
「莉乃愛はクォーターなんだね」
先生が薄茶色い私の髪に触れる。
「クォーターだから見かけはほとんど日本人だけどね。色白なのはママに感謝してるかな」
「いや、お母さんに似て・・・・」背の高い先生が顔を傾げる。
「莉乃愛は美人だよ」
「ん・・・・・・」
私が見上げると、先生は優しくキスをした。
「カーテン、閉めて」
先生はそう言うと、準備室の鍵をかけた。
私は緊張しながらもカーテンを閉める。

先生は入学した時からの憧れだった。
自分みないな子供には、手が届かないと思ってた。
私は、先生と急接近した、去年の学祭のことを思い出していた―。
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