お兄ちゃんのおかげです。
「じゃあ、休み時間にまた会いに来るから」
「うん。・・・分かった」
お兄ちゃんはあたしの髪を優しく撫でて、階段を上り始めた。
よし・・・行こう。
「よぉ、安西」
え・・・・・・。
男の人の声が聞こえた瞬間、体が震えた。
やだ・・・、恐い・・・。
「無視すんなよ」
腕を掴まれた。
「ぇ・・・ぁっ・・・」
この声は、大澤 武瑠(オオサワ タケル)くん・・・?
確か、武登くんの幼なじみで・・・。
でも関係ない。
恐い・・・、お兄ちゃん・・・っ
「人のものに触れないで」
「あ?」
「お兄ちゃん・・・」
あたしの怯える声が聞こえたのか、
お兄ちゃんは武瑠くんを睨んであたしの前に立っていた。
「兄貴が出てくんなよ」
こうしてお兄ちゃんが出てくることは、初めてじゃない。
ってゆうか、しょっちゅう。
「出てこないと妹が危ないんでね」
「兄貴がそんなに甘いから、安西がこんな性格なんだろ」
え・・・。
違う、あたしが男性恐怖症なのは、お兄ちゃんのせいじゃないよ・・・?
小4の頃、誘拐されたことが原因で・・・・・・。
お兄ちゃんのせいじゃない。