bubble love
「いつかの童話で読んだ事があるのよ。あの方は両目を犠牲にしたのね…」
「はい」
「私に、会いにきてくださった。とても、幸せだわ。最高の、クリスマスプレゼントよ──…」
その幸せそうな表情に
「はい…」
ボクはいつの間にか唇を噛み締めていた。
すると、姫は啖呵を切ったように
「……っ!お願いよっ、あの方を連れて行かないで……っ!」
と泣きそうな表情でボクにすがってきた。
「あの方がいなくなったら、私──…」
ボクは、そんな姫に何も言えなくなって「ごめんなさい」と言い残してバルコニーを後にした。
───…真剣な瞳、
あの方の真紅の瞳と言ったら、
目が離せなくなる──…
きっと、王子も
あの瞳に惑わされたのだろう。
きっと、そうだ。
じゃないと、おかしいじゃないか…
王子が陸を……、あの女を
選ぶなんて──…