D U S H ! !
「じゃ」
俺はその場を立ち去ろうとした。
「おい鮎川…!!なんで居座る気なんだよ」
雰囲気を壊さないようにと、出来る限りの小声で言ったのにさ、なんであいつは…
「え?なんて?」
「……。」
そりゃあ聞こえないよねー☆
ふつふつと込み上げてくる怒りを押さえて微笑んでたら、麗奈さんが「ここに居て欲しい」と言った。
「聞いてて欲しい。…またけんかでもしたら助けて。」
「……。」
黙ったまま俺達は少し離れて自転車を止めた。鮎川をひっぱたきそしてその場に立つ。
「…チョコ、食べたかったでしょ」
「要らない」
「…リョウジくん嫉妬して食べたんだってさ。あたしもまだまだイケるかなあはは。」
「知らない」
え、これマズイんじゃないの…
「……全部聞いた。」
「………そう。」
「…なんか言ってよ。」
「そうって言っただろ」
「そうなんかじゃわかんない」
「……」
…なにこの「彼氏彼女」的な言い合い。
俺には甘い甘いじゃれあいにしか聞こえないんですけど。…違う?
するとカイジが何かを言った。
「昨日…悪かった。」
「…うん。」
「あれは、カッとなって言っちゃって、…そんなこと言うつもりじゃなかった。」
「……」
「悪かった。」
「……」
麗奈さんの沈黙。
何故?カイジが謝ったら許すんじゃなかったのか?
お願いだから仲直り――
耳で聞いちゃっているんだから
とせめてもの「目」をつぶっていた俺は、チラッと麗奈さんを見た。
「……!」
「ガビジィ~ばだじぼばるがっだびょ~」
泣 い て る ! ?
「ばだじぼひっく、ぼんどはね、ぼんどばあやばりだがっだの~。けどひっく、…はあーひっく、ブライドがあ~」
鮎川のデ、デジャヴ…
自分家の前で泣きじゃくる麗奈さんと、仕方のなさそうな顔してなだめるガビジ。
これで仲直りしたっていうんだから大したもんだ。
隣を見たら、鮎川が大泣きしていたのはスルーしとこう。