D U S H ! !
急いで車に乗り込んで、姉ちゃんが入院している病院に向かった。
病院には既にりょーくんが居た。
「お義父さんお義母さん!」
作業服のままのりょーくんだった。
そう、彼は家族を養う為に大学を辞めた。
年齢や今の状況はどうであれ、二人は夫婦で、家族だ。
確か今は建築現場で働いてるらしい。
下っぱ中の下っぱだから、毎日へとへとだとメールで聞いた。
「弥生はどう?自然分娩できるって?」
「多分大丈夫らしいんですけど…。でもどうなるか分からないです」
「そう。私の子だから大丈夫よ。数時間で生ますわ」
生ます って…
それからりょーくんだけはお医者さんに呼ばれ分娩室に入った。
俺たち家族三人は、ずっと黙って、分娩室の前の椅子に腰掛けていた。
母さんはとても冷静だった。
父さんと俺は気が気でなくて、座ったり立ったりを繰り返していた。
病院に着いて何時間が経っただろう。
もう夜で、母さんには「もう夜遅いんだから帰りなさい」と言われた。
父さんと二人で病院を出ようとした瞬間。
文字通りのオギャアという声と共に、りょーくんの「やったああぁあぁあ!」という歓喜の叫びが聞こえた。