D U S H ! !



急いで車に乗り込んで、姉ちゃんが入院している病院に向かった。

病院には既にりょーくんが居た。


「お義父さんお義母さん!」

作業服のままのりょーくんだった。
そう、彼は家族を養う為に大学を辞めた。

年齢や今の状況はどうであれ、二人は夫婦で、家族だ。

確か今は建築現場で働いてるらしい。
下っぱ中の下っぱだから、毎日へとへとだとメールで聞いた。


「弥生はどう?自然分娩できるって?」

「多分大丈夫らしいんですけど…。でもどうなるか分からないです」

「そう。私の子だから大丈夫よ。数時間で生ますわ」


生ます って…


それからりょーくんだけはお医者さんに呼ばれ分娩室に入った。

俺たち家族三人は、ずっと黙って、分娩室の前の椅子に腰掛けていた。


母さんはとても冷静だった。

父さんと俺は気が気でなくて、座ったり立ったりを繰り返していた。

病院に着いて何時間が経っただろう。

もう夜で、母さんには「もう夜遅いんだから帰りなさい」と言われた。

父さんと二人で病院を出ようとした瞬間。





文字通りのオギャアという声と共に、りょーくんの「やったああぁあぁあ!」という歓喜の叫びが聞こえた。




< 332 / 346 >

この作品をシェア

pagetop