桜花散恋
噺
足元がおぼつかない葉月を土方と沖田が両脇から支え、ようやく屯所についたころには、既に大分夜も更けていた。
「とりあえずこの部屋で寝てろ。朝になったら着物を持ってきてやる」
「はい・・・」
屯所の端の一室に布団を敷いてやり、眠るのを見届けてから静かに襖を閉めた。
「で、つれてきちゃったけど・・・どうします?」
「明日、近藤さんたちを集めてもう一度聞く」
「わからないっていってましたけど」
「あのおかしな格好も気になるし、一晩すれば今よりはまともな返事ができるんじゃねえか?」
「・・・まぁ、そうですけど」
「総司、お前はもう寝ろ」
「葉月ちゃん、ほっといていいんですか?」
どう考えたって葉月が新選組に仇なすものではない。
しかし、万が一のことを考えると、一人にするわけにはいかないのだ。
「・・・俺はここにいる」
「・・・わかりました。じゃあ、おやすみなさい」
「おう」
沖田は少し考えたあと、土方に従い、部屋に帰った。
「(面白くなりそうだなぁ)」
これから起こることを想像し、わくわくしながら眠りについた。