桜花散恋
「俺は、このお嬢さんが嘘をついてるようには思えないんだ」
「それに関しては僕も同意です。着ていたものがあきらかにこの時代のものじゃない」
近藤さんのあとに沖田さんも続ける。
「土方さんは信じてるんですか?」
「・・・・」
沖田さんが土方さんに問う。土方さんは、ゆっくりと組んでいた腕を組み替えて目を閉じた。
「・・・・あの場所は京の中でもはずれのほうだ。しかも辻斬りも多発してる。好き好んで近寄るような場所じゃねえ。そこで震えて座ってるやつが、嘘ついてあんな場所にいる理由があるか?」
土方さんの言葉に私と近藤さんと沖田さん以外のその場にいたみんなが驚いた顔をして土方さんを見る。
沖田さんは当然だというようににこにこしていて、近藤さんも満面の笑み。
「やはりトシは優しいな!」
「えっ・・・え?」
私には何が起きたかよく理解できなかった。どういうこと?
「鬼の副長の許しが出たんだよ。ここにいていいって」
沖田さんが私の顔を覗き込んでそういった。
「・・・私、ここにいていいんですか・・・?」
「どうやってここに来たのかわからないんじゃ、帰る方法だってわかんねえだろ。今京でお前がうろつけば、浪士たちのいい獲物だ」
土方さんはそう言って立ち上がった。
「それぞれ自分の持ち場に戻れ。・・・一応言っとくが、古雅は新撰組の客人だ。手は出すなよ」
釘を刺す一言を言い残し、土方さんが部屋を出て行くと、他の人も次々と部屋から出て行った。
そのうちの一人、これまた美形で長身の人が、ちらっとこちらを見て微笑んでくれたけど、あの平助という人はやっぱりこっちをにらんでいた。