桜花散恋
「・・・分かりました!包帯と水、持ってきますね!」
私がそう言って屯所の中に行こうとすると永倉さんと原田さんに止められた。
「遠慮すんなって!そんくらい俺たちが持ってきてやるよ!」
「え・・・でも・・」
「葉月は平助についててやってくれ。で、何が必要なんだ?」
「じ、じゃあ・・原田さんは手拭いと包帯を、永倉さんは井戸で水を汲んできてもらえませんか?」
二人は私の言葉にうなずいて屯所の中へと戻っていった。
「「・・・・」」
そして沈黙。
「(そうだよ・・・私、藤堂さんに嫌われてるんだった!)」
怪我の酷さに驚いて忘れていた。
「(・・私のことが嫌いだから、手当てを断わろうとしたのかな?)」
ふとネガティブな考えが頭をよぎった。慌ててそれを振り払うと藤堂さんの前にしゃがみこむ。
「あの・・・少し触らせてもらいますね?」
「・・・」
目を合わせようにも逸らされてしまって意志も汲めない。
「・・・失礼します」
恐る恐る足に触れると、ぴくっと反応したのがわかった。
「痛い、ですよね?」
「・・・うっせーよ」
さっき、永倉さんや原田さんと話していた時の声より数段低いトーンが帰ってきた。
気まずい空気の中で藤堂さんの足を見る。見た目からも熱をもっているのがわかったけど、触るとそれは尋常でないことを知らされる。