桜花散恋
「あんなできた人の中に平助がいることが俺は不思議でしかたなくってさ」
「!」
少しふざけた様子で笑う彼の口から出た名前に体が強張った。
「・・・藤堂さんと、仲良いんですね」
「幼なじみだからな!小さい頃からずっと」
その話を聞くと、先程剣を交わしていたときの会話も納得できた。
「で、幼なじみとして、さっき平助を止めてくれたお礼」
「え?」
「あいつ人見知りっていうか、適応能力がないっていうか・・・」
「・・・・」
流石、幼なじみと言うべきか。
何も言わなくても藤堂さんが私を受け入れていないことはすぐにわかったらしい。
「あんな態度じゃ、ひどい人間だと思ってもしかたないけどさ・・・身内贔屓かもしんないけど、平助は悪い奴じゃないからさ!!」
原田さんの言葉を思い出す。
藤堂さんは二人の言うように悪い人じゃないと思う。
幸親君の言ってることはきっと贔屓じゃなくて、ほんとのことで・・・
「平助は素直じゃないからなー!・・・余裕が出てきたら話しかけてやってよ」
原田さんや幸親君の言うことが嘘だってことはないと思うから・・・
いつか、藤堂さんと普通に話すことができたらいいな、と心の中で淡い期待を抱きながら頷いた。