桜花散恋
「よし。これで終わりだな!」
最後の一枚を洗い終え、真之介くんが立ち上がる。
「ありがとう、真之介くん。・・・あ、」
「干すまでやってこそ、斎藤組長からの命を全うしたことになるからさ」
真之介くんから隊服を受け取ろうと思い手を伸ばしたけれど、真之介くんは洗濯物を背に隠し、渡してくれない。
「本当にごめんね・・・。疲れてるときに」
「いいって。俺も悪いことしちゃったし、おあいこだよ」
結局最後まで手伝ってもらってしまった。
終わったときには少し日が傾いていた。
「・・・なんか腹減ったなー」
部屋に帰る途中で真之介くんがぽつりと呟いた。
「夕餉まで時間あるよなー」
きっと時間は現代でいう五時くらい。今から夕餉を作り始めるわけだから、みんなで集まって食べ始めるには時間がある。
「・・・あ、」
「ん?どうかしたか?」
そのとき私の頭に浮かんだのは、こっちの世界に来たばかりのときに着ていた制服。昨日探ったそのポケットの中に・・・
「真之介くん、ちょっと待ってて!」
「え?!葉月!?」
私は真之介くんの声を無視して自分の部屋に走った。そして部屋の隅にたたんで置いてた制服に手をかける。
「・・あった!」
ポケットの中から出てきたのは淡い桃色の包み紙。私はそれを握り締め、真之介くんのところを目指した。