桜花散恋
話を聞いていると、原田さんが組長である十番組はこぞって島原に出かけたらしい。
じゃあ、幸親君も一緒なのかな・・・と考えたりした。
二人の言い合いは終わる兆しがない。
「土方さんが怖くないんですか?!」
「うっ・・・それは・・」
進展しない押し問答が続く。
待っていても埒が明かないと思った私は、決心をして玄関を通り過ぎることにした。
なるべく、気付かれないようにして。
・・・でもそんな時に限って。
ぎしっ
「しぅっ・・・!」
「おっ!葉月ちゃんじゃねぇか!」
古めかしい床の木が一歩踏み出した瞬間、音を立てて同時に二人がこちらを振り向いた。
永倉さんが手を振っている。
「こ、こんばんは・・・」
「・・・組長、彼女は?」
永倉さんと言い合っていた隊士さんが私の方を見て首をかしげた。
「古雅葉月です」
私は少しだけ頭を下げて名前を言った。
「土方さんから聞いてんだろ?」と永倉さんが付け足す。
すると、納得したように「あぁ」と言って私の方を向き直った。