桜花散恋
「二番隊所属、國弘(くにひろ)です」
永倉さんと言い合っていた様子からは想像もできない、穏やかな声。
―――・・・新撰組の中で一番爽やかな人かもしれない・・!!
「うんうん。仲良くしろよ?・・・ってことで!俺は島原にくり出すぜ!!」
「あ!!」
永倉さんは私と國弘さんが向き合っている間に、ここぞとばかりに全力で屯所を飛び出した。
遠くの方で「じゃーなー!!」という声がした。
「ったく・・・あの人は・・」
玄関から少し出たところまで走ると、彼は溜息をつき、諦めたように屯所の扉を閉めた。
「あの・・・」
「え?」
「永倉さん、追いかけなくてもいいんですか?」
「・・・まぁ、十番隊がいるなら、帰ってはくるからなぁ・・」
「?」
國弘さんは少し苦笑して事の顛末を教えてくれた。
「以前、組長が島原に行ったとき、呑みすぎて次の日の巡察に出れなかったんだ。元々酒癖が悪い人で、前にも何度か似たようなことがあったから・・土方さんから行こうとしたら止めるように言われてたんだ」
「それでさっき止めてらしたんですね」
「あ、さっきの会話聞いてたの?」
いじわるそうに笑いながら聞いてくる彼は、誰かに似ている。