桜花散恋
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少しだけ冷めてしまったお茶を飲みながら、いろんな話をした。
まだ新撰組が壬生浪として蔑まれていたときのこと。初めて沖田さんや土方さん、近藤さんに会ったときのこと。
「彼らと出会ったとき、私は本当に感動したものでした。同じ道を進むために剣術を磨く。私の志と何の違いもなかった」
話をする山南さんから、新撰組を心から大切にしていることがひしひしと伝わってきた。
「山南さんにとって新撰組は信じるものそのものなんですね」
私がそういうと山南さんは少し困ったように笑った。
そして少し目を伏せて幾分(いくぶん)、暗いトーンで言った。
「・・・ですが、少しずつ、ずれが生じているようでしてね」
「ずれ・・?」
「隊中が最近、騒がしい。幹部も、隊士もどこかいそいそしている。犬も、京の街も同じなんですがね」
わたしにも心当たりがないわけではなかった。
理由はよくわからないけど、気持ちが逸ってしまうのがわかる。
「私も、その一人です」
静かに吐き出された言葉には、私には到底理解できない重みがあった。