桜花散恋
屯所についたときにはすっかり暗くなっていて、門のところでお梅さんが原田さんと立っていた。こちらに気づいた原田さんが手を振る。
「おっ、斎藤が一緒だったのか」
「たまたま帰り道で出会した」
「葉月ちゃん!良かったぁ…!遅かったから心配してたのよ!」
「ごめんなさい!あ、頼まれてたものはちゃんと買ってきましたよ!」
「葉月が帰ってこねえからお梅さんが心配して迎えに行くって言い出したんだぜ?」
大丈夫だって言ったろ?と原田さんが呆れたように笑う。
お梅さんも照れたように笑いながらありがとう、と言って私が持っていた包みを手に取った。
そして「二人の夕餉はちゃんと取ってあるから今から食べなさい」と言われ、二人で顔を見合わせて、いつもご飯を食べているところへ向かった。
「……斎藤さん」
「なんだ」
「また、椿、一緒に見に行きましょうね?」
「……」
斎藤さんが怪訝そうな顔をして私を見る。自分でもいきなり何を言ってるんだろう、と思いながらも言葉を繋ぐ。
「………あんたが言えば総司や左之が連れて行ってくれるだろう」
「斎藤さんと、また、見に行きたいんです!」
斎藤さんは目で、よくわからない、という目をしていたけど、私がじっとその目を見つめるとふ、と息をつき、少しだけ笑って「いいだろう」と言ってくれた。
斎藤さんは気づいていたんだ。
ううん、私も知っていた。
一年後、こんな風に、花のことを考えていられるような時代ではなくなっているし、もしかしたら花を見ることさえできないかもしれないということを。