桜花散恋
「近場にある神社でいいか?」
「あっ…はい」
淡々と提案する土方を横目に見て思わず、どもる。
お梅が頼んだ付き添い人はまさかの土方だった。
『行くぞ』
『えっ…ひ、土方さんお忙しいんじゃないですか?』
『他の者に頼んできたから大丈夫だ』
そう言って、葉月を待たず土方は歩き出した。
し、視線が痛い…
町を歩いていると、隣にいる自分でもわかるぐらいはっきりと視線を感じる。
今日の土方は新撰組のトレードマークである浅黄色の隊服を羽織っておらず、千鳥格子柄の黒い着流しに、紺瑠璃色の帯という私服。
…お洒落だ。
普段は隊の鬼副長の呼び声が高いが、容姿だけ見れば誰もが認める美男子である。
先ほどから突き刺さる視線はそんなに格好いい男の隣を歩いていることに対する、町の人々の羨望と嫉妬が交じったものだった。
「どうかしたか?」
「い、え…」
土方さんの横を歩くのが辛いんです、とも言えず葉月は曖昧に微笑んで黙り込んだ。
まぁ、これだけイケメンなら仕方ないよね…
土方は慣れているのか全く視線が気にならないようだった。