桜花散恋
「・・・土方さーん、その子、離してあげてくださいよ。土方さんが怖すぎて泣いちゃってるじゃないですか」
「!!・・すまねぇ」
土方が手を離すと少女は力なく地面に座り込んだ。
「ねぇ、どうしてこんなところにいたの?」
沖田がしゃがみ、少女と視線を合わせる。
「わっ・・わ・・・から、ない・・です」
「わからないだと?!」
「っ・・!!」
土方の声に少女の肩がはねる。
「土方さん!少し黙っててください!」
「お・・おう」
早く話を進めようと、沖田が土方を諌めてからもう一度少女に向き直った。
「じゃあ、どこから来たのか、わかる?」
少女はまだ怯えた様子で首を横にふった。土方は腑に落ちない表情だったが、沖田は普段よりも幾分優しい声音で続けた。
「僕は沖田総司で、あっちが鬼こと土方歳三さんです」
「総司!てめえ・・!」
土方の苛立ちをよそに、沖田は少女に尋ねた。
「君の名前は?」
「・・・古雅、葉月・・です」
少女はようやく口を開き、沖田と目を合わせた。
「そう。葉月ちゃんっていうんだね」
名前が言える。記憶を失っているわけではないということを沖田と土方は目を合わせて確認した。