桜花散恋





そのときはその場で別れたけど・・・・・


のちのち隊士さんたちがしているうわさを聞くところによれば、町に出るたび彼女と顔を会わせては絡まれているらしい。


土方さんはそういう色恋沙汰が表面化したことないらしいから、隊士たちの中では相当な話題になっている。



「土方さんが純情な町娘に手を出した」とか「遊郭の美人には飽きたんだ」とか。











「へぇ・・・そんなことがあったんだ」

「はい。多分、隊士さんたちの話を聞いてると、土方さんと話している女の人は凛さんじゃないかなって」

「ふーん・・・」

「あ!そういえば!俺平助と約束してたんだった!」

「また稽古やるの?好きだよねぇ、君達も」

「総司もたまにはやれよな!じゃ、俺行くわ!じゃあな、葉月!」

「あっ、ばいばい!」




急いで去っていった幸親くんの背中を沖田さんと二人で見守る。




「幸親くん、今日も元気ですね」

「いつものことだよ。今はいいにしても、夏とか本当迷惑なくらい暑苦しいから」

「そんなにですか?」

「一度体験してみればわかるよ」




今まで過ごしてきてわかったこと。
すました顔でいる沖田さんが私に言ってることの半分くらいは冗談だってこと。
にこにこ笑いながら彼が発する言葉を、私はいつも本当なのか嘘なのか、真剣に迷う。そんなところを沖田さんにからかわれるっていうのも、最早おなじみのパターン。


おなじみなのに、いつもひっかかってしまう。








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