エリートな貴方との軌跡
岩田くんとは雑談を交えながら、出張中の松岡さん不在で静まる試作部へ向かった。
どんなに忙しくしていてもソレを億尾にも出さず、何時でも部下を出迎えるから。
あの大らかさとさり気ないフォローに救われたのは、私だけではないだろう…。
「それじゃあ…」
「うん、何かあったら呼んでね」
「はい、ありがとうございます!」
資料とともに研究室へ向かった岩田くんを見送り、一旦デスクに落ちつく私。
真っ暗なPC画面を立ち上げる間に、カバンから手書きの資料などを取り出した。
一通りメールチェックをしてすべてにレスを終えると、新たにメール作成をする。
「…うーん、あとは…」
まだまだ早い午前6時のオフィスで、自然と虚しい独り言を呟いてしまうけれど。
昨日の夜に纏めたリストや選曲に加えて、お願いしたい物を最終で考えている私。
余裕を持って日取りを決めていたとはいえ、結婚式の準備は想像以上に大変だ…。
我が儘で名古屋で行う事もあって、割と親しい人だけを呼ぶアットホームなモノでも。
やっぱりソコは名古屋の結婚式らしく、お義母さまが張り切っている部分もある。
何より修平の社会的立場を考えれば、ソレなりにお声を掛けるべきだろうけれど。
居を構える此方では落ち着いてから、改めて結婚パーティーを開く事にしているのだ。
「・・・よし!」
そうまでして譲れなかった理由は、修平が抱える辛い思いを大切にして欲しいから…。