エリートな貴方との軌跡
彼から紡がれた“フィアンセ”のフレーズが、否応なく鼓動を高めて止まらなくて。
その気恥かしさより嬉しさの方が勝るとは、私も相当“修平バカ”かもしれない――
「うん、知ってますよ」
「…は?」
計算違いの答えが返って来たせいか、私を離さない修平からは間の抜けた声が届いた。
ジョシュアにとってはソレがまた愉快だったらしく、ククッと笑いが漏れて来る…。
「だって。貴方が本社より日本へ戻った理由なんて、チーフから聞かされてますし。
その“原因”の彼女が来るって言うから、どんな子なのか楽しみにしてたんだけど――
んー、何ていうか…コッチに居ないタイプ?だし、単にマホが気に入っただけですよ」
「はぁ!?何言ってるのよ…!」
黙って聞いているには失礼すぎる言葉に、ついに修平から離れて振り返った私は。
とうとう我慢の限界と言わんばかりに、対峙したジョシュアをキッと睨みつけた。
「やっぱ怒った顔もキュートだ」
「ふざけないでよ…!」
それでも全く効果ゼロのようで、アハハと軽快に笑い飛ばされてイライラだけが増す。
ヘラヘラ笑って言うジョークでは無いのに、あまりに軽んじた言葉が腹立たしい…。
「言いたい事はそれだけか?」
「とりあえず」
すると背後から淡々とした口調でジョシュアへ問い掛ける修平に、仕方なく口籠れば。
「――大神、始めるぞ」
「おっ、いつになくやる気だ」
どういう訳か傍観者と化していたチーフへ話を振り、一先ずおざなりとなってしまう。