エリートな貴方との軌跡
いつ誰に対しても、変わらない態度の彼だから、此処でもあしらいが上手いのだろう。
「大神、このCADデータは?」
「はいよー」
そうして早速研究室へ向かった修平の姿を見て、“ツマラナイ”と呟いたジョシュア。
直属でないとはいえ、彼は支社の役員というのに、悪びれる素振りもなく笑った挙句。
「仕事人間って、やっぱり面白味に欠けるねぇ」
「っ、失礼します…!」
吐き捨てたフレーズに憤慨しながらも、大人でいようと一度は決めたトコロだけれど。
会ってまだ数十分の修平に対し、こう勝手なレッテルを貼られてはもう我慢の限界だ。
「あ、マホ待ってよ」
「ついて来ないで!」
周囲からの唖然とした視線を感じながらも、とうとう我慢出来ずに彼に言い放つ私。
気合いを入れて来た分、下らない火種を生み出した彼への嫌悪感は増すばかりとは。
いささか大人げないとは思いつつも、コツコツヒール音を鳴らしてその場から逃げた。
「…やっぱイイかも」
修平を追って研究室へ向かう最中、小さな声でジョシュアが笑った事など全く知らず。
ペコペコ頭を下げて歩いて行く度に、“大丈夫”と声を掛けられ安堵していた――…
「ああ、良いよ」
試作部内にあるオフホワイトのドアをノックすると、分かっていたように声が届いて。
「…失礼します」
恐る恐るドアノブへ手を掛けて開けば、白衣姿にすっかり変わっていた2人を捉えた。