エリートな貴方との軌跡
不安と苛々に駆られていた心も、その柔らかな微笑を見ただけで落ち着いていくから。
ソレだけでホッと和んでしまうあたり、私は人としてまだまだ未熟だと思わされた…。
「真帆ちゃん、モテるんだねぇ」
低くとも軽快な声を発したチーフが、ジョシュアの一件を差しているのは明確だから。
「いえ…、からかわれただけですから。
ご迷惑をお掛けして本当に申し訳…」
「だからぁ、謝るだけ損だって」
彼の方へ向き直り頭を下げようとしたところ、言葉と動作をバッサリ遮られてしまう。
謝るだけ損と言われても、ソレが当たり前の日本社会に溶け込んだ私は腑に落ちない。
内心では困り果てていたので、チラリと修平を一瞥すればフッと笑い首を縦に振った。
郷に入れば郷に従え――だけれど、本社のメンバーの本質が見えなくて不安になる…。
「とりあえず、アイツは気にしないで良いよ。
それより、修ちゃんの功績見たくない?」
「こ、功績…ですか?」
すると話をガラリと戻した大神チーフに拍子抜けをして、オウム返しとなってしまう。
「功績なんて大袈裟だろ」
「えー、それ言うのぉ?褒めたら素直に喜ぼうよ」
ニヤニヤ笑うチーフが手にしているのは、どうやらソレと思しき物のようだけれど。
「さっきから気色悪い」
「そう言う修ちゃんこそ、ご機嫌ナナメってるしぃ――ねー、真帆ちゃん?」
「…ふふ、私も早くお聞かせ願いたいです」
「あーあ、“理由は”スルーされちゃった」
そう言ってまた軽快に笑ったチーフに対して、ハァ…と修平がひとつ溜息を吐いた。