エリートな貴方との軌跡
パタンと静かにドアを閉めれば、そこはまた試作部のもっとも活発な空間であり。
カツ、カツ…と、ヒール音が心地良く鳴り響くセルジオロッシのパンプスで進むと。
前方から此方へ近づいてくる方を捉えた私は、どうしても急ぎめに歩いてしまった。
「Mr.エドワード!」
「おお、来てたのか」
恰幅の良い体格の人物こそが、実質的に本社の試作部を取り仕切るエドワード氏だ。
「はい。本日より宜しくお願いいたします。
恐れ入りますが、コチラをチーフよりお預かりしましたので…」
WEB会議でお目に掛かる度に、なかなかの剛腕ぶりを発揮する彼は支社でも有名で。
まずは簡単な挨拶で一礼をして、大神チーフから預かったファイルを差し出せば。
「ああ、すまない。ソッチは順調か?」
「はい、部内で連携して助け合って…」
頷いて受け取ったエドワード氏の問い掛けには、臆することなく頷いたというのに。
「――まぁ、支社間レベルでは日本はソレなりのレベルにある。
日本支社には黒岩もいるし、伊藤さんの力が何より大きいからな」
「…そうかもしれません」
「じゃあ、ミーティングで」
言葉を待たずして納得する彼の言葉が、ズシンと私の心に重く圧し掛かる気がした。
修平と彼を育てた伊藤相談役の存在しか、日本支社の力と認められないなんて――…
「マーホッ!」
「ちょ…っと、何するのよ!」
エドワードゼネラル・マネージャーが立ち去って、行き場もなく呆然としていれば。
「ヒマなら俺のヘルプしてよ」
不意に後方からグッと肩を引き寄せたジョシュアが、ニッコリ笑って歩き出した…。