エリートな貴方との軌跡
この優しさに甘えている事はひどく恥ずかしい…、そう分かってはいるのだけれど。
敢えて突き放すのに、肝心な時には何時でも守ってくれる修平には昔から感服だもの。
いくら強がっていようとしても、限界地点で差し出される優しさに抗う訳が無いよ…。
「おい…」
「ジョシュア…、そこまでにしとけ。
黒岩は仮にもオマエの先輩だ。口の聞き方には気をつけろ」
すると絶妙な間を割り入り、訝しげなジョシュアをピシャリと窘めたのは大神チーフだ。
普段のフランクな口調はなりを潜め、場の空気をシンとさせてしまうほどの威力がある。
彼こそ直属の上司であるというのに、チッと舌打ちをして部屋を出て行ったジョシュア。
「ったく、アイツは…」
そんな挑発的な態度も一笑に伏せるチーフの態度も、やはり修平同様に大人だから。
「悪かった――俺のせいで嫌な思いをさせて」
「え、しゅっ…、部長のせいでは…」
周りの好奇の視線を引き受けるジョシュアの姿を見ては、オロオロとする私を宥めた彼。
不安の色を纏った彼の低音ボイスに乗せられ、名前を呼びそうになる失態に口籠れば。
「真帆が怒るのって…、大体が俺のせいだし?」
「…っ」
ふと爽やかな香りが鼻腔を掠めつつ、耳元へグッと近づいて囁かれた言葉は強烈すぎる。
「フッ…、相変わらず耳が弱点だ」
「ちっ、違います…!」
これほど優しさと厳しさを持ち合わせた彼のように、私もいつか変われるのかな…?
その一方でチーフが“No hay dos sin tres.(二度ある事は三度ある)”と呟いていた…。