エリートな貴方との軌跡


この優しさに甘えている事はひどく恥ずかしい…、そう分かってはいるのだけれど。



敢えて突き放すのに、肝心な時には何時でも守ってくれる修平には昔から感服だもの。



いくら強がっていようとしても、限界地点で差し出される優しさに抗う訳が無いよ…。



「おい…」


「ジョシュア…、そこまでにしとけ。

黒岩は仮にもオマエの先輩だ。口の聞き方には気をつけろ」


すると絶妙な間を割り入り、訝しげなジョシュアをピシャリと窘めたのは大神チーフだ。



普段のフランクな口調はなりを潜め、場の空気をシンとさせてしまうほどの威力がある。



彼こそ直属の上司であるというのに、チッと舌打ちをして部屋を出て行ったジョシュア。


「ったく、アイツは…」


そんな挑発的な態度も一笑に伏せるチーフの態度も、やはり修平同様に大人だから。



「悪かった――俺のせいで嫌な思いをさせて」


「え、しゅっ…、部長のせいでは…」


周りの好奇の視線を引き受けるジョシュアの姿を見ては、オロオロとする私を宥めた彼。



不安の色を纏った彼の低音ボイスに乗せられ、名前を呼びそうになる失態に口籠れば。



「真帆が怒るのって…、大体が俺のせいだし?」


「…っ」


ふと爽やかな香りが鼻腔を掠めつつ、耳元へグッと近づいて囁かれた言葉は強烈すぎる。


「フッ…、相変わらず耳が弱点だ」


「ちっ、違います…!」


これほど優しさと厳しさを持ち合わせた彼のように、私もいつか変われるのかな…?



その一方でチーフが“No hay dos sin tres.(二度ある事は三度ある)”と呟いていた…。



< 155 / 278 >

この作品をシェア

pagetop