エリートな貴方との軌跡


至難なものにぶつかって立ち止まりそうになる度、ふと現れるのが弱さであるけれど。



すぐさま逃げるよりも先ず、その場でひと呼吸置いて冷静になろうと教えてくれた人。



その人こそ、上司もとい婚約者である修平だから――私もほんの少しは変われてる…?




「うわー、何この美味しさ…!」


あれからチーフのひと声で部内の空気は、また仕事モードへ一新されて安堵したものの。



さっそく会議と試作で追われる修平とは違い、私は定時でササッと上がらせて貰えた。



「でしょ?ここのクラムチャウダーは有名だもの」


「うんうん、こんなに美味しいの初めて!

リリィのお陰で得しちゃった気分よ」


異国の知らない土地でひとり、時間を持て余す事は必至だろうと覚悟を決めたところ。



試作部でサポートをしていると、チーフが同世代の女性を紹介してくれて今に至るのだ。



「アハハ、マホの喜びようも珍しいけどね」


熱々のクラムチャウダーを味わう私を、楽しそうに窺う彼女こそが試作部のリリィだ。



ブラウンのストレートヘアが長身にピッタリで、まるでモデルのような出で立ちなのに。



これで試作部に勤める才女でいて、私とは同じ歳というのだから羨ましくもなる。



「アハハー。よく食いしん坊って言われるの」


「あら、ココでもノロけちゃう?」


「ちっ、ちがうよ…!」


食べる事も作る事も好きな私は、美味しい食べ物を前にするとテンションが上がって。



その度に修平からは決まって、食いしん坊だなとクスクス笑われてしまうのよね…。



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