エリートな貴方との軌跡


“高校時代から漠然と研究者が夢だったけど…、康太の事で絶対に叶えようと思った”


これは付き合ってから教えて貰った事であり、ソレを本当に実現させた姿を見ていると。



せっかくの現場から離れざるを得ない執行役員の立場は、活躍場を失っていないの…?



帰国当時にアメリカ本社を“俺のフィールドじゃないから”と、言ってはいたけれど。



コチラで伸び伸びとしている修平の様子に、やはり心配と疑念が生まれてしまったの。


「…うーん…、眠いな…」


シャワーを浴びながらモヤモヤと沸き立つ湯気にのせて、次々に不安が浮かぶとはね…。



甘くて優しい香りに包まれたバスタイムを終え、適当にスキンケアをしていた時だった。



「っ…、何だろう?」


BGMすらつける気も無く静まり返った部屋で、ドアベルがピンポンと軽快に鳴り響く。



時刻は現地時間で午前0時すぎとあり、ホテルとはいえ思わずビクリとしてしまう私。



再度ピンポンと鳴ったドアベルに警戒心を抱いて、恐る恐るドアへと近づいて行けば。




「…俺だけど――」


「え、しゅ、修平!?」


「…フッ、正解」


厚いドア越しに小さく届いた優しい声で、一気にドアチェーンを外す行動へ移っていた。



ドアスコープで確認する行為すら煩わしいほど、慌ててガチャリとドアを開け放てば。




「今日の様子だと――…電話より抱きしめた方が早いと思って、そのまま直行した」


優しく笑ったスーツ姿の修平の爽やかな香りと温かさで、何も言えずに包まれていた…。



< 159 / 278 >

この作品をシェア

pagetop