エリートな貴方との軌跡
“高校時代から漠然と研究者が夢だったけど…、康太の事で絶対に叶えようと思った”
これは付き合ってから教えて貰った事であり、ソレを本当に実現させた姿を見ていると。
せっかくの現場から離れざるを得ない執行役員の立場は、活躍場を失っていないの…?
帰国当時にアメリカ本社を“俺のフィールドじゃないから”と、言ってはいたけれど。
コチラで伸び伸びとしている修平の様子に、やはり心配と疑念が生まれてしまったの。
「…うーん…、眠いな…」
シャワーを浴びながらモヤモヤと沸き立つ湯気にのせて、次々に不安が浮かぶとはね…。
甘くて優しい香りに包まれたバスタイムを終え、適当にスキンケアをしていた時だった。
「っ…、何だろう?」
BGMすらつける気も無く静まり返った部屋で、ドアベルがピンポンと軽快に鳴り響く。
時刻は現地時間で午前0時すぎとあり、ホテルとはいえ思わずビクリとしてしまう私。
再度ピンポンと鳴ったドアベルに警戒心を抱いて、恐る恐るドアへと近づいて行けば。
「…俺だけど――」
「え、しゅ、修平!?」
「…フッ、正解」
厚いドア越しに小さく届いた優しい声で、一気にドアチェーンを外す行動へ移っていた。
ドアスコープで確認する行為すら煩わしいほど、慌ててガチャリとドアを開け放てば。
「今日の様子だと――…電話より抱きしめた方が早いと思って、そのまま直行した」
優しく笑ったスーツ姿の修平の爽やかな香りと温かさで、何も言えずに包まれていた…。