エリートな貴方との軌跡
それが不快感ばかり増すものだから、私は自然と眉根を寄せてしまったのだろうけれど。
言葉で応戦しようとした刹那、ソレをいとも容易く制したのは対峙するジョシュアの瞳。
試作部に在籍してから今まで、他社を含めこれほどの冷たい眼を向ける人は居なかった。
「いくらキュートでもさぁ、アイツの請け売りだけだとツマンナイよ?」
「っ、どうして、そういう言い方ばかり…」
口調はフランクでありながら抑揚のない彼の声音が響くから、思いがけず怯んでしまう。
それを察したと言わんばかりに、フッと鼻で笑ったジョシュアの眼差しに言葉を失った。
「それならマホは、俺の何を知ってんの?」
「…、」
かなりの身長差から見下げられている私は、突然の問いに慄いて言葉に詰まってしまう。
「――だから、黙っててね」
完全に交戦状態で無くなったと分かると、いつものスマイルを向けて来るから恐ろしい。
人となりを隠したままアッサリと豹変するジョシュアと対峙し、ようやく気づかされた。
それは先般のミーティングで周囲の口を封じさせるほど、恐ろしい力を備えていること。
その瞳から真意がまったく窺えないうえ、どうすれば良いのかも分からなくなっている。
だけれど誰にも内心を見せない彼を、計らずとも心配してしまうのはまた本音であって。
大神チーフが指示して来た話の中には、これが含まれていたのではないかと推察する私。
嘲るように笑う彼が無性に虚しく映るから、その後は言葉を発するのも諦めてしまった。
同時になぜジョシュアを私に任せたの?――肝要な答えには未だ辿り着けないようだ…。