エリートな貴方との軌跡
本社がアメリカにあるとはいえ、今後の世界経済を担うと思われるのはアジア諸国界隈。
今の東南アジアや隣接諸国の発展速度は目ざましく、進展速度の速さも群を抜いている。
まさに経済国日本が50年でなし得たことを、今後10年でクリアすると言われており。
世界の目がアジアへ向けられるのも当然である。同時に、当社も早くから着手していた。
もちろん主要の各国には支社があるものの、今後を担うには随分と営業力が弱いらしい。
そこでアメリカに本社を置く当社は、今夏にインドに新たな企業を立ち上げるとのこと。
その販路などは随分前から開拓済みのため、日本支社は本社とを取り持つ中継地になる。
別の理由として挙げたのはアメリカからより早く対応出来、どの支社より優秀だそうで。
必然と日本支社へは、さらなる人員増強と試作部内の設備投資の要請が入って来ていた。
当然のように試作部の業務部長を務める、修平の仕事量が更に膨大になった理由はコレ。
国内はおろかアジア諸国への挨拶回りや打合せに奔走して、今回やって来ているのだ…。
「これから業務内容に対し、出来る・出来ないの分別をする者は試作部を外れてくれ」
3ヶ月ほど前、本社と日本支社とのWEB会議の席で、CTOからこう言われたほどだ。
その発言のさす意味はもちろん、“誰でもアジア諸国へ飛べる準備をしろ”というもの。
海外に苦手意識を持つ人なら発言に慄いて逃げるだろう、というCTOが予想したのだ。
やはり本社の人間の気質は気難しいな、と誰もが小さく溜め息を吐き出していたけれど。
「CTO、僭越ながら申し上げます――
私どもの中には、戦線を外れずただ直向きに製品開発と向き合う者しかございません。
どうぞ細やかな心配りより、今後のビジョン拡大をよりよく考えて参りましょうか」
そんな空気を刷新してくれたのは、誰よりも日本支社を高めてくれる修平だったのだ…。