エリートな貴方との軌跡


そして同時に彼の凄さを目の当たりにしたという事実で、一様に感心した様子であった。



文章を訳することが出来ても、滞りなく会話可能の域へ達するには別次元であるから…。




「…レイフ、今後は使うのを止めた方が良いですよ。

ちょい悪オヤジは自分で言うものではないし…。そうだろ、大神?」


「うーわー、かなり面倒。修ちゃん困るんですけどー」


「おいリヒト…、また俺を騙したのか!」


「えー、レイが素直に信じるから楽しいだもん」


「なーにが“だもん”だ!――罰として、今日の夜はおごれよ」


「うーわー、レイって大人げない」


「30過ぎたオマエが言うな!」


「心は不変のティーンだしー」


会話に参入して来た大神チーフに驚かされたものの、ダークグレイの瞳を追い続けた私。



イタリア系のCTOと滑らかに話す修平が、ヨーロッパ出張へよく赴くのも甚く納得だ。



やはり外資企業のトップに立つ者は、その他の言語にも精通していると改めて感じたし。



それだけでなく、決して努力だけでは手に入れられない決定的なモノを持っている修平。



人材育成や技術力向上のためには自身の労力を露と惜しまず、仕事に関しては手厳しく。



時として容赦ない激を飛ばすこともあるけれど…、それは相手を思ってだとよく分かる。



少数精鋭と呼ばれる日本支社の強みの技術力は、誰かひとりが欠ければ損失が大きい――



伊藤元統括部長から学んだという育成法は紛れもなく、日本支社の技術力を担っている。



だから私も大きな変化に対し、プレッシャーかチャンスと捉えるか――もちろん後者だ。



そしてまた陰で努力を重ねて来た彼のことを、なおさら上司として誇らしく感じたの…。



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