エリートな貴方との軌跡
あの容姿の3人に加え、体育会系で男らしい平さんは学内でも目立っていたに違いない。
国内最難関のT大時代の3人の姿を思い浮かべると、思わず顔もほころんでしまうもの。
そして何より、“黒岩先輩”という耳慣れないフレーズが完全に心を浮足立たせていた。
「松岡と絵美先輩、仲良くやってる?」
「それはもう、…ラブラブです」
「うわっ、それはそれで想像したくないな」
“喧嘩するほど仲が良い”は2人を指しているからと、…もちろん誇張したのだけれど。
なんとも言えない、という面持ちへと変わった平さんの発言で私まで笑わされてしまう。
絵美さんは苦虫を潰したような表情になる筈で、それを見て松岡さんは喜ぶと思うから。
ルックキラーの鋭い眼光をサラリかわせるのは、スマイルキラー以外にいないのも事実。
真帆ちゃんたちと違ってラブラブ期間も無ければ、あのヘンタイ男はウザイだけだわ――
あーあ…、お姉さまはそう言って“夜の営み”を盛り上げるのが好きだから困るよね――
軽口を叩いた絵美さんに向かって、楽しそうに言葉を返しながらニヤリと笑う松岡さん。
気取ったトコロの感じられないところは、月日の長さと互いを知り得た関係だと分かる。
「ふふっ。…お2人はラブラブって言うより、パートナーだなって見ていて思います。
松岡さんも絵美さんも大切な先輩なので、このまま幸せでいて欲しいです」
「うんうん、それは俺も思ってた。
でもさ…、あの2人が結婚するのがいつか、仲間内で賭けているんだけどねぇ。
だから吉川さん、進展あればぜひ情報ちょうだい!」
「えー…それは、松岡さんに怒られます」
「いいのいいの。アイツは黒岩先輩の婚期を賭けてた、前科一犯の男だから」
まさかのビックリ発言に目をパチクリさせていれば、平さんはさらなる爆弾投下をする。