エリートな貴方との軌跡


前科一犯という、いつの日かに聞いたフレーズより。冒頭のフレーズはさらに衝撃的で。



何よりも楽しそうにニコニコ笑っている平さんは、私の出方を待っているようにも映る。



「――結婚するんだよね?黒岩先輩と」


「…情報源は松岡さんですか?」


「うん――ちなみに“修ちゃん”なんて、黒岩先輩のことを呼べるのもアイツだけ」


やはり知っていたかと納得し、彼の代名詞を呼べるのは今のところ特定の人物だと学ぶ。



「そうなんですね。…でも、もう1人いますよ?」


「それは吉川さんでしょ?」


「えっ、ち、違いますよ…!」


「あれー、松岡がそう言ってたのに」


“おかしいな”と首を捻る彼に対し、かの有名人は一体ナニを吹き込んでいるのだろう?



それは勿論、先ほどから話題に上り詰めの松岡さん。何よりもう1人とは大神チーフで。



まったく残念というのかな…、私は修平のことをそう呼んだことは未だかつてないのだ。



「それは松岡さんの策略ですから」


「式はいつ挙げるの?」


「えっ、…5月に名古屋で挙げます」


「そっかー。おめでとう」


私の狼狽ぶりを笑ってしまう平さんは、やはり松岡さんと親交あるせいか大らかなよう。



「お幸せに――って、もう幸せか!」


「ふふっ、嬉しいです。ありがとうございます」


同じサークルだったという彼らの接点が、こうして今も続いているのだから人生は凄い。



それから10分ほどしてやって来たジョシュアと交代し、私は部署へと速やかに戻った。



< 192 / 278 >

この作品をシェア

pagetop