エリートな貴方との軌跡
異国の地に居ると日本語に触れるだけで、何だかそれが嬉しく感じられるのが不思議だ。
もちろん今回は共通の話題で盛り上がれたのが最大の理由であるし、松岡さんに感謝――
3人の大学時代をよく知る人物も実は、平さんのように案外と身近にいるかもしれない。
少し前に見せて貰った、いつかのサークルの集合写真の中にも彼が紛れているかもね…?
「マホ…、さっきから顔がニヤけてるわ」
「うん、ちょっとね」
頭を片隅でそんなことを浮かべていれば、ふふっと笑みが零れてしまうのも仕方ないわ。
肯定をしながらPC画面を眺めていた私は、日本のプリンスくんから依頼を受けていて。
それは私か松岡さんのみ侵入を許可されている管轄だけれど、あいにく松岡さんが不在。
慌てていたトラブル・プリンスくんは海を越え、こちらへ連絡を寄越した経緯があった。
そのため先ほど以上に、複雑かつ難解に管理されたサーバーへ再アクセスをしていた私。
すると傍らへ来て軽快に話すのはリリィで、ようやく手続きを終えるとそちらへ向けば。
「もちろん、シュウのことでしょ?ごちそうさま」
「あ、まだ何も言ってないのに!」
「聞かなくても分かるわよー、シュウとマホって」
「――薄っぺらい、」
“いいわね結婚間近って”と言って、楽しみながら笑う彼女を制したのは冷たい声音だ。
「まじでムカつく」
「な、…っ、」
「――ね、分かるでしょ?そんなモノ、すぐに壊れるって」
油断がいけなかったと思う。…だけれど、まさかジョシュアにキスされるとは想像したくなかった。