エリートな貴方との軌跡
優しい手が安堵と愛情を増すばかりで、それを募らせるダークグレイの瞳に声もなく返す。
“ふざけんな!”の一言を最後に、足音が去って行くのを背後で感じた私は彼から離れた。
「…ごめんなさい、」
「謝るのは俺の方だ」
作業スペースの一角に優しい声音が響けば、ふるふると小さく頭を振るしか出来なくなり。
ようやく収まった涙を拭いながら彼を見つめると、柔和な笑みを浮かべているために尚更だ。
心を許せる相手に出会ってしまうと、今まで知らなかったネガティブさが表面化すると同時。
貴方の傍で過ごすことが叶うこの日々は、何にも代えがたい幸福感で包んでくれるとも…。
それに素直に心を委ねるのも大切だけれど、…今は他にすべきことが責任としてあるから。
「私…、ジョシュアを追いかけます」
「ええ!?マホ危ないわよ」
「ううん、大丈夫よ」
ニコリと笑って言い切ったその態度に、なぜだかリリィは首をぶんぶん振ってノーを示す。
「駄目だ」
「え、」
すると同調するようにして届いた声色も、不機嫌なオーラを纏っていたから修平を見返した。
「――なんて言っても、真帆ちゃんは言うこと聞かないし。
まして俺が一緒に行くと言えば、それも拒否するだろ?」
「…ご名答、です」
但し、“あいにく、真帆バカでね”とクスリ綺麗に笑う彼には本意を見抜かれているらしい。