エリートな貴方との軌跡
燦々と降り注ぐ太陽の下でサングラスを外した彼の眼は、温厚さの中に潜む何かがある。
あまり表情に出ないように、と考えつつも。心のどこかでこの人には敵わないとも思う。
「き、れた、というのは…?」
「んー、だって珍しく会議を早々に切り上げたんだよ?
これは見物だしついて行こうとしたのに、よりによって呼び止められちゃってねー。
修ちゃんの俊足には、さすがのアリスも置いてけぼりくらって怒ってたし」
会議での場面を思い出してか、クスクスと楽しそうな声を響かせる大神チーフに苦笑い。
「真帆ちゃん、聞いてる?」
「あっ、はい。すみません、」
「だからぁ、無意味に謝んないでよ」
重ねて“すみません”と言うのは気が引け、了解しましたの意味を込めて頷いて見せる。
彼の発した言葉の数々はすべてを分かった上で、私が今さら取り繕うだけムダに等しい。
「…実はジョシュアを宥めたのですが、彼には伝わらなかったようです。
元はといえば、私の至らないせいで招いた事態です。…チーフのご期待に、」
「それで真帆ちゃんは、問題児に何を言うつもり?
仕事には厳しくても、人に対してはすこぶる温厚な修ちゃんだしね。道理の通らない事以外で怒らないのはよく知ってる。
むしろ修ちゃんの性格なら、人を責める前に自分の行いを省みるでしょ?」
「はい。それは常々、感じます」
「まあ、多勢だろうけどさ…。修ちゃんに憧れるヤツもいれば、反対に気に入らないヤツもいるからね。
だからこそ、ジョシュアには何を言っても通じなかったの。現にそうでしょ?」
一転して表情の消えたチーフが発したのは、致し方のない事実であるけれど悲しいモノ。
“Time is money”のモットーですぐ急かすのもまた、考える隙を与えないためだろう。
コクリとひとつ頷いて返したものの、それはまた自身の頼りなさを露見しただけのこと。
「もちろん面倒を見るように指示はした。さて、ヤツを探してどう料理する?」
まるで彼ひとりがすべてを分かっていての発言に聞こえるから、いささか不満には思う。