エリートな貴方との軌跡
まるで視線を合わせようとしないものの、こちらの話に返してはくれているジョシュア。
「ジョシュアみたいに頭が良くないけどね」
「それは否定しない」
「えー、少しくらい謙遜してよ」
それが何だか可愛く見えてクスクスと笑えば、ようやく碧眼がこちらへと静かに向いた。
「だって俺、ハーバードだし」
「うん、それは大神チーフから聞いてる――やっぱり優秀なんだね」
「マホ、それ嫌味?」
無表情から一転、ジロリと鋭い眼差しで私の発言を牽制した彼がビーカーを机上に置く。
「嫌味な訳ないでしょ?単純に凄い羨ましいっていう意味だもの。
だって、それだけレベルの高い学校でレベルの高い授業を受けた分だけ、知識が人より長けているじゃない」
もう怯まないでいるのは社会で揉まれたことで、随分穏やかさを身につけたせいだろう。
「…さあね」
「そうなの!」
期待外れ、とでも言うような面持ちに変わったジョシュア。それを見つつまた笑った私。
それでも先ほどとは違い、すべての器具を手放してコチラへと身体を向けてくれている。
だからこそ、避けるべき人ではない――話せばわかる人だという安心心に微笑んでいた。
「でもね、この会社に入って本当に良かったと思う」
「また唐突に」
“本当に不思議”と言う彼。私以上の強烈キャラは支社に沢山いるのにと口を尖らせた。
キラーと名のつく松岡さんと絵美さんの2人から始まり、トラブル・プリンスくんとか。
「それと実はね…、私が入社当時に配属された部署って秘書課なの」
「あー、なんかそんな感じする」
支社のメンバーの様子を思いながら彼に語りかけると、ああと妙に納得されてしまった。