エリートな貴方との軌跡


やっぱり年上の私としては些か悔しいもので、ムムッと頬を膨らませたのも致し方ない。



“そういうところがキュートなのに”と、笑われたことでハッと我に返って本筋に戻る。


「で、でもね!私ほんとうに絵美さんが大好きでとっても尊敬しているのよ」


「うんうん」


「こんな私が支社で役職を与えて頂けたのは、自分の持っている技量でも何でもなくて。
紛れもなく、これまでに知り合って来た方のお陰なのよ」


「謙遜するなぁ」


窘めるような言葉には、ゆっくり左右へ首を振った。これは綺麗事でなく事実だもの…。



「ジョシュアもさっきの言葉で分かったでしょ?どれだけ私が人生を軽く見て、身勝手な人間だったか…。

もし新卒のまま、何の障害もなくこの部署へやって来ていたら…、間違いなく私は今、この場所に来れていないどころか、多分すぐに諦めて退職していたと思う。

そんな自分の甘さを気づかせ、優しく教えて下さったのは…、絵美さんとの出会いから始まった人たちなの」


絵美さんとの出会いがなければ、きっと試作部にそのまま配属されていても辞めていた。



とても厳しい職場で耐えられるほど、当時の自分には努力する気持ちが希薄だったもの。



そう強く思えるのは、まるで数珠つなぎのように幾つもの出会いを齎してくれたから――



「もちろん黒岩部長の言葉は今も大切な糧にさせて頂いているし、今だってこれからだって“日々勉強”しなきゃいけない。

だからね?人との出会いってすごく大切なもので、自らその機会を失うのはすごく悲しいことで。

私はジョシュアと知り合って、この数日間で見ただけでも、博識で賢明で冷静な判断を出来るところをすごく羨ましく思う。

…でもね、私にもジョシュアに負けないところがあるの。…だから今後も一緒に仕事したいと思えた」


澄んだブルー色の眼を見開かせている彼にニッコリ笑うと、なぜか心がすっきり晴れた。



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