エリートな貴方との軌跡


自分の狭量さを初めて知って悔し泣き、自分の知識や見分を更に広めたいと方向転換し。



溜めこんで悩んでみても…、結局は毎日ある道を進むしかないのだと知った社会人生活。



私が私らしく、笑っていて欲しい――そう優しく包んでくれる修平の言葉が力になる…。



「ねえマホ――それは遠回しに、俺のコト振りたい訳?」


マグカップを傾けて中身を飲み干したジョシュアが、色のなさない眼差しを向けて来た。


「うん、そうよ――なんて言うのは、おこがましいね。…うん、そうですけど、」


「ドッチか分かんないよ、それ」


「うん、ごめんなさい。…ジョシュア、私は大切な人がいるから答えられないの」


上手く言えない私に破顔してくれた彼に再度、真剣な顔で一番伝えるべき言葉を言った。



一瞬、ほんのごく僅か。ディープ・ブルーの瞳が悲しげに映ったのは気のせいだろうか。



「…ひとつ聞きたい――何でアイツなの?」


眼を見て言い切ったところ、ふいとジョシュアの視線が逸れ机上の薬品に移ってしまう。



そうして尋ねられた私は多少驚いたけれど、正面にある薬品棚を見ながら安堵し笑った。



申し訳ないと思うものの、返事はきちんと受け止めてくれたから――やっぱり心根の優しい人だと。



「私ね…彼と出会うまでは、男の人には守って貰うことをステイタスにしていたところがあって。はっきり言って、自己中心なお付き合いしかしていなかったの。

自分の都合に合わせるのが当然で。どうして私が会いたい時に会えないの?とか…。いま思い出してみてもホント、ずるくて酷い女だったなと思う。

でも、さっき…この会社で絵美さんに出会って、色々出会いがあったって言ったよね?

それに付け加えるならね、…こんな私に、愛する感情を教えてくれたのは彼なの――」


修平との初めての出会いを思い出すと、今度は懐かしさが込み上げてふと笑みが零れた。



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