エリートな貴方との軌跡
仕事中の彼の姿からは、きっと想像出来ないと思う。こんなに独占欲が強い人なんて…。
「…子供なのは私だもん」
「それが真帆だもん」
「もうっ、真似しないでよ」
サラッと返す彼に小さく頬を膨らませれば、その頬を人差し指で楽しみながら押されて。
「可愛い顔が台無しだ」
「可愛くないの。もうっ、」
ますます頬を膨らませる私にクスクスと笑ったあと、今度は耳のあたりに触れて来る彼。
こうして口調も声音もすっかり砕けているのは、修平がリラックスしているという証拠。
それを許してくれる相手が自分であること、そして彼が笑ってくれることがすごく幸せ。
「真帆ちゃんも大変だ――嫉妬深い男相手だと」
「ううん。修平の方が、ずっとずっと大変だよ?」
「――それなら。一生勝負し合うってことで、」
「ずっと勝敗つかないね?」
何度か軽くキスを交わしつつ、リングの填まった指先を絡めながら微笑み合っていると。
あまりにも自然に言ってくれたこのフレーズで、私の涙腺が潤みかけていたのは秘密だ。
もちろん嫉妬や独占欲だって限度があるけれど。ずっと忘れてはならない感情とも思う。
こうして互いを想い合う時間がどれほど心を満たせるのか、…すごく贅沢だと思えるし。
ジョシュアの件で確かに不安が取り巻いた日もあった。でも、改めて此処に誓いたいの。
どんなことがあっても修平の幸せをまず願い。彼の笑顔を引き出せる人でありたいと――
程なくしてタクシーが停車したのは、何故かホテルからほど近いブティック街であった。